高速無料化のこと, きょうのつぶやき
高速無料化のこと
この間政権をとった民主党の、もっとも目立つ政権公約といっても良い「高速道路無料化」について、最近いろいろなところで目にする意見に疑問を感じたので、ちょっと現時点での自分の意見をまとめる意味でも一度書いてみることにしました。
僕が疑問に感じたのは、「今の高速1000円政策のせいで、例えばこの間のシルバーウィークには、各地で大渋滞が発生した。ならば、無料化したらさらにひどいことになるに違いない(だから止めてくれ)」、という意見。この最近よく聞く意見に対して僕が感じた違和感は二つあります。一つ目が「単純に今の高速1000円の延長線上のものとして無料化を位置づけられるのか」という点、そして二つ目が、「道路の混雑(後で書きますがここには環境問題も含んでよいと思います)に対する解が、本当に高速道路有料化の維持(無料化しない)で正しいのか」という点です。
まず一つ目の方ですが、1000円→マズー、ならば無料化→もっとマズー、と無邪気に外挿できるのだろうか、と僕が感じるのは、(よく言われることですが)有料(たとえ一円でも)と無料の間には質的な差異があるように感じるからです。今の高速で発生している渋滞には、少なからず「有料であること」がそもそも原因の一つとなってしまっているものもあるのではないか、ということですね。
単純に料金所で発生している渋滞なんかはまさにそうですが、それ以外にも、有料であるが故に交通状況によって柔軟に道路の選択が出来ず(一度降りてしまうと再び高速に入ろうとしたときに再課金されてしまいますので)、渋滞している道路にロックインされてしまう、そしてそれがさらなる渋滞を引き起こす、という状況が少なからずあるように感じるのです。
僕の数少ないドライブ体験の中でも、このことに関連して印象的な出来事が二つありました。一つ目は、とある週末に都心を走り回っていたときのこと。僕の買った中古車には、ほとんど10年前のものながら、VICSの光ビーコン、電波ビーコンに対応した、渋滞回避機能付きのナビが付いています。その日は都心の道路、首都高も下道もとても混んでいたので、ナビ様の言うとおりに走ってみることにしたんですが、そうしたらなんと計4回も首都高に出たり入ったりするルートを選択してくれ、なんと2,800円もかかってしまいました(ETCは付いてないんで)。確かに選択された道はそれほど混んでいなかったような気がするけれど…(汗。まぁそれはともかく、普通の人ならそこまでナビ様の言うなりにはならず、例えば高速を降りちゃった時点でナビを「有料回避」モードなりにするのだとは思いますが、しかしという事はつまり、自ら道路の選択肢を狭めている、本当に最適な道を選べていない、ということになります(ナビ様基準での「本当に最適な道」は、首都高に4回も出入りするものだったわけですから)。
もう一つは、富士五湖方面にドライブに行った帰りのことです。その日もいつものように、中央道上り線では小仏トンネル付近から10km以上の渋滞が発生していました1。そこでちょうど渋滞のしっぽにあたった相模湖付近で高速を降り、下道(国道20号)を行くことにしました。すると、そちらは全然混んでいなかったのです。確かにあそこの下道は高速と違い、古い峠越えのくねくね道で、お世辞にも走りやすい道とは言えませんが、それでも高速にそのまま乗っていたよりは早く、八王子側へ抜けられたと思います。この例を見ても、最近発生している高速道路の大渋滞が、必ずしも渋滞の根本原因、道路のキャパシティオーバーから発生しているわけではなく、ユーザが最適な道を選択することを阻害されていることにも原因の一端がありそうなことがわかります。
さて、二つ目の疑問について。「高速を無料化すると今以上に大量の車で町はあふれ、渋滞は発生するし環境にも最悪」という主張は、基本的には正しいと思います。他のパラメータを変えないまま、高速道路の通行料という、自家用車にのみかかる2コストが減ったら、経済的合理性に則って移動手段に自家用車を選択する人が増えることは、火を見るよりも明らかです。
しかしAという事象がBという現象を生むとして、Bを解決するための手段としてAの排除が最適か、というと、必ずしもそうではないでしょう3。
ところで、高速が無料化されようがされまいが、慢性的に渋滞が発生している道路は存在します4。そしてそういう場所は別に高速に限りません。そういう箇所というのは、建設済み道路による自動車収容キャパシティを、需要が越えてしまっているので渋滞が発生しているわけですが(つまり渋滞の根本原因)、この手の渋滞を解消するには、解決策は基本的に2つしかありません。新たな道路を建設してキャパシティを増やすか、需要そのものを減らすかです。
アメリカなんかではとにかく国土が広いので、「道路のキャパシティを増やす」ことも結構うまくいっているように見えますが(ハイウェイにふつーに7車線とかあります・汗)、狭くて平野の少ない日本の国土ではそもそも物理的な限界がありますし、即時性も望めません(いわゆる「ハコモノ行政」「道路行政」反対の立場を取ってきた現政権的にもそちらへは行きづらいだろう、という面もあります)。となると、取るべき道はひとつ。道路を使う車そのものを減らすしかありません。
「高速道路料金を維持する」というのはその意味で、確かに自家用車を選択する経済的合理性を弱め、車の需要を低下させる効果があります。しかし同時に、じゃあ高速に乗らなければいいのか?という疑問が生じます。高速道路有料維持賛成の人はよく、「受益者負担の原則」(利益を受ける人がコストも負担すべし、という考え方)を有料化維持の理由としてあげますが、僕にはむしろ自家用車の環境負荷や高速と一般道での自動車自体の熱効率の差(前者のほうが燃費が良いのが一般的)、渋滞や維持管理コストなどは両者に生じていることなどを考えると、高速のみに課金している今のあり方のほうが、「受益者負担の原則」に反しているように感じられて仕方がありません。国道が無料で高速が有料であることに、何か合理的な理由があるのでしょうか?5同じように国や地方自治体によって作られ維持されているものなら、もっと総体的に見た方が良いのでは、そしてその方が効率的なのではないでしょうか6。
実は、僕はこの、「高速道路無料化」案が、本当ならもうひとつの案とセットで提案されるべき政策だったのではないか、と思っています。もうひとつの案とはすなわち、いわゆる「環境税」ですね。両者は本来セットで、つまり「飴(高速無料化)と鞭(環境税)」として、機能すべきものだったのではないか、と思うのです。
僕はかなり明確な環境税導入賛成派ですが(笑)、その理由はとても主観的なもので、今の自家用車を使うために必要なコストが、その環境に与えるインパクトなどに比べてあまりに安すぎる、と肌感覚として感じているからです(ずっと以前、昔原付しか乗っていなかったころから感じていましたが、最近自分の車を買ってますますその思いが強くなりました)。ハイオクガソリンですら、ガソリン価格が結構高くなった今ですら、1リットル130余円とコンビニで買うミネラルウォーター以下の値段で買える、というのは、非常に不自然に感じます。一般に自動車は電車の10倍程度の二酸化炭素排出量を持つといわれているのに7、電車以下のコストで利用できる(移動できる)、というのは明らかにおかしいです。しかも駅にも行く必要がないんですよ!便利すぎ&低コスト過ぎます。
まぁここにいたるまでの経緯として、自動車産業が国の主要産業として重要=政策的に優遇せざるを得ない状況があったりしたことは理解できるのですけれども、そろそろ少し舵を違う方向に切っても良いのではないか、と思うんですよね。先日国連総会で二酸化炭素排出量25%削減をうたってしまった手前もありますし。大規模産業にはそれ相応の政治力もあるので、なかなか難しい面はあるものと思いますが…。
さて、仮に環境税なるものを、例えば移動手段に対して、その環境負荷に応じた形でかけることが可能とすれば、自家用車を移動手段として選択する経済的合理性を、「高速道路通行料」のような間接的な形ではなく、より直接的に減らすことが可能です。一般道を行こうが高速道を行こうが、ガソリン10リットル使えば、その環境負荷に応じた税金がかかる。電車ならその同じガソリン10リットル分(に相当する環境税)で、より遠くまでいける。そもそも移動手段に自家用車を選んだ時点で、高速を使おうが下道を使おうが、電車を使った場合に比べればその環境負荷は大差ない(どんぐりの背比べ)のに、そこにコストだけ差がある、という状況はおかしいです。本来なら、「車で行くか電車で行くか」というレベルで悩むべきだと思うんです。そしてそこにこそコストの差、環境負荷に応じた正しいコスト差が存在するべきです。僕にはその方がより合理的なように思えます。それに、高速道も一般道も、せっかく税金をつぎ込んで作った社会資本なのですから、有効に活用する(利用率を上げる)方が本来良いはずです。
もちろん移動手段としての車の持つ重要性は、周辺環境、例えば車以外の交通網の充実度などによっても変化します。そのため、たぶんユースケースや地域性によって税率を柔軟に変化させる事が難しい、ガソリン他燃料費に対する間接税という形だけで環境税を実現するのはきっとうまくないでしょうね8。たぶん、燃料費(エネルギー費)に対する間接税という形と、自動車税や自動車重量税のような車の種類や居住地、果ては用途などによって柔軟に税率を変化させうる直接税という形のハイブリッドにするのが良いように思います。なお、環境税を目的税化することには僕は反対です。ここまで書いたことからも明らかなように、僕は環境税を、ある意味環境負荷に対するペナルティのようなもの、と位置づけています。周りに迷惑をかけるヤツはそれ相応のペナルティを受けるべきである、と。なので、速度超過違反切符の罰金の用途が限定されていないように、環境税の用途も限定する必要はない、と思います。
ちょっと脱線しました。話を戻すと、そんなわけで僕は、二つ目の「道路の渋滞解消、環境問題への答え」としては、高速道路有料化の維持よりむしろ、もっと直接的な、環境負荷に対する環境税の徴収、という形の方がより合理的だろうと思っています。高速は無料にして限られた道路キャパシティをより有効に使えるようにしつつ、車、という環境に対して非常に贅沢な移動手段に対しては、その贅沢さにふさわしい税金を払ってもらうことによって、今無自覚・無駄に自家用車という移動手段を選択している層に自覚を促すのが良いのではないかと思うのです。
Wikipedia によれば(まぁWikipediaなんで話半分で読むべきと思いますけれど)、日本の産業界は、環境税の導入に対しては産業活動への悪影響があるとして反対の立場だそうですが、例えばドイツなどでは既に賛成の立場に転じつつあるとか。環境負荷の低い活動、移動手段を開発、利用すればどんどん節税できるわけで、うまくやれば鞭はまったくもらわず飴ばかり舐めることも可能なはず。その辺りの将来のメリットも見据えて、日本の産業界も「挑戦的課題」として前向きに受け止めてくれると良いのですけれども…。
きょうのつぶやき
I too feel the cost for using automobile is too low against the actual cost which impacts to environment. RT @matsutake “燃費が10kmLの… (14:38 [twitux](http://sourceforge.net/projects/twitux" rel=“nofollow)から)
It’s too useful, almost like sin. (14:38 [twitux](http://sourceforge.net/projects/twitux" rel=“nofollow)から)