bird「エヴリブレス−Every Breath−」

エヴリブレス−Every Breath−

エヴリブレス 瀬名秀明著。新聞広告のキャッチコピーが、この話の印象と非常に似ていたところに興味を惹かれ、図書館で借りて読みました1。もともと、TOKYO FM のラジオドラマの原作として書かれたお話ゆえか、全編ラジオに対する愛にあふれた、一組のカップルにまつわる現実世界での 100 年、仮想世界での永遠にわたるお話。ちなみに実際に読んでみるとぜんぜん似てませんでした2

この人の本にしては結構楽しめた方なのだけれど、どうも僕にはこの人の書く表現がときどき、うまく理解できないというか、脳みそにイメージが湧いてこないことがあります。ちょっと引用してみると、

「でも、でも」柚希は答がほしくていった。「いま苦しかったらどうするんですか?私なんかがいえることじゃないけど、でもいまどうしても辛くて、どうしようもなかったら?永遠に苦しむことになったら?できることで、できないことを変えるなんて本当にできるんですか?」
「だからぼくたちには、優しさと勇気の両方が必要なんだよ」
「それが過去と未来ですか?」
「“いま”のぼくたちにある、まなざしのことだ」
柚希は口を噤んだ。

瀬名秀明著「エヴリブレス」より引用

上記は主人公杏子の娘、柚希の仮想世界での分身と、もう一人の主人公洋平の交わした会話で、かなり物語の核心となる部分なのですが、僕にはどうしても意味が分からなかった。この部分が理解できないことで、僕には結局洋平が何を考えていたのか、が最後までよく分からなかった。それが分からなくても十分楽しめる小説なのですけれど3

何年か経って読み直したら分かる日がくるのかな…。


  1. 「グリフォンズ〜」の方は以前感想を書いたときはねおんさんに借りて読んだわけですが、今回こっちの本を読む前にどうしても再読しておきたくなって結局古本で購入してしまいました。愛の違いか?!(笑。 ↩︎

  2. 強いて言えば現実世界・仮想世界の二面で物語が進行するところ、話の構成が円環構造になっているところ、くらいかな、似ていたのは。 ↩︎

  3. 全体に凝ったつくりの小説なので、何度か読み返すとあちこちにいろいろな伏線があって、そういうのが好きな人には特に楽しめそう。 ↩︎