bird「おかしな二人―岡嶋二人盛衰記」

おかしな二人―岡嶋二人盛衰記

おかしな二人―岡嶋二人盛衰記 岡嶋二人の中の人の一人、井上夢人さんの書いた、岡嶋二人が誕生して消滅するまでの記録です。

岡嶋二人作品といえばこれまで、「クラインの壷」と「99%の誘拐」しか読んでなかった1のに思わずこの本を買ってしまったのは、やっぱり作者の井上夢人さんとナニゲに 2 hop の関係2で親近感を持っていたから、かなぁ。読み始めたとたんの冒頭に「トリックを隠して書くなんて器用な真似は出来ないので覚悟するように」と書かれていて少し後悔しかかりましたが、とても面白くて一気に読んでしまいました。確かにトリックや小説の構成がばっちり書かれてしまっている箇所もあるけれど、かといって二度と岡嶋作品が読めなくなるか、というとそんな事無いので、未読の方もご安心を。我が家の場合むしろ、この本がきっかけで今、岡嶋熱が高まっていたりします。

本書は大きく「盛の部」と「衰の部」に分かれていて、乱歩賞を受賞してプロデビューするまでが「盛」、プロデビューしてから消滅までが「衰」となっています。ミステリー小説とは全く縁のなかった井上さん、徳山さんコンビ3が、もっぱらお金目当てで乱歩賞を取ろうと決心し、何年もの努力の末ゲット、その後プロとして書き続けていく間の赤裸々な苦労話は、とてもリアルで面白い。普段漠然と考えているプロ作家の生活、というものへのイメージが結構変わりましたね。

特になるほどなぁと思ったのは、乱歩賞を受賞してからの怒涛のような毎日について。商業作家としてデビューする、ということはつまり、一定の期間で水準以上のクオリティを持つ作品を量産し続けなければならない、ということを意味する、ってことを初めて身にしみて理解できました。乱歩賞目的で「とりあえずいい作品を一つ書く!」ということを目標にやってきた二人にとって、その後の急なペースチェンジ、量産作業がとても辛かったであろうことは想像に難くなく…。いやはや、プロの作家、というのは大変なんですね。

実はこの本の前には東野圭吾のエッセイ、「さいえんす?」を読んでいたりしたんですが、そっちはクソつまらなかったです(笑。小説はそこそこ面白いのに、なんでエッセイはあんなにつまらないんだろう…という個人的な感想は置いておいて(^^;、そのエッセイの中で、東野氏が最初から量産可能な商業作家を目指して自分で書きうる分量を計算、それに伴って得られるであろう印税額まで綿密に計算してからデビューしていたのと比べると、岡嶋二人のお二方はとても対照的で、面白かった。

コメント

かぴのすけ (Mon, 25 Feb 2008 00:35:19)
俺もクラインと99%しか読んでないな。岡嶋二人ってそんなに世間で言うほど面白くもない気がするよ。
「夏への扉」はひさびさに面白い小説だったね。このレベルのやつなんか他にない?
Digitune (Sat, 29 Mar 2008 11:36:35)
お返事ひとつきも遅れちゃったよ。すまん>かぴのすけ
「世間で言うほど」って、そんなに言われてたっけ?なぜか最近本屋で平積みになっていることはたまにあるけれど…。
その後、あゆみさんが岡嶋月間に突入して図書館で沢山借りてきてくれたので、けっこういっぱい読みました。総じて「読める」本が多いね。あゆみさん曰く、「赤川次郎と印象が近い」とのこと。
マイ・ベストは「クラインの壷」だけど、「コンピュータの熱い罠」とか「殺人者志願」とかも面白いですよ。ストーリーが、とかトリックが、というよりも、キャラクターや台詞回しが気持ちが良いゆえ、「読める」印象が強いのかな。この辺は森博嗣なんかとは違う部分。
かぴのすけ (Mon, 07 Apr 2008 23:37:21)
ぬぬー。そういえば買っといて読んでない本が6,7冊。
新しい本を追加するよゆーがないふいんきじゃん。
最近はアドエスいじくるのにかかりっきりなんでさらに時間のよゆーもない感じ。
つーことで、SHGもいーけどやはりメイリオでしょー。
digitune (Tue, 10 Jun 2008 21:43:46)
メイリオは、Safari や Linux (Ubuntu) で ClearType でないフツーのアンチエイリアスをかけて使うと良い感じ>かぴのすけ

先日 Windows XP 用のメイリオが正式に配布され始めたのを受けてウチのマシンにも入れてみたんだけど、巷のサイトで思いのほかすでにメイリオが指定されているのを知って今更ながらに驚いたり。知らなかったぁ。

  1. ちなみに「クラインの壷」はかなりのお気に入り。 ↩︎

  2. 「知り合いの知り合い」の意。 ↩︎

  3. 徳山さんはミステリー好きだったそうですけれど。 ↩︎