birdVOCALOID2 キャラクター・ボーカル・シリーズ01『初音ミク』, 実は, む、

VOCALOID2 キャラクター・ボーカル・シリーズ01『初音ミク』

初音ミク HATSUNE MIKU すでに旧聞の類に入りますが、ずっと何か書きたいと思っていたのでいまさらながら書いてみます。「VOCALOID2 キャラクター・ボーカル・シリーズ01『初音ミク』」(クソ長いので以下、初音ミクと略) とは、音楽用音声合成ソフト (つまり歌のシンセサイザー) のことなのですが、発売されるやその自然な歌声が多くの人を驚愕させ、驚いた人たちが次々と主にニコニコ動画1方面へサンプル動画をアップロードしたことに伴って更なるムーブメントを巻き起こした (巻き起こしている?) ソフトです。個人的に音声合成ソフトといえば、古くは NEC PC-6001mk2 に標準搭載されていたそれで遊んでいた小学生時代が非常に懐かしいわけですけれども (<古過ぎだっつーの)、その後の遭遇といえば確か Mac に搭載されていたスピーチ機能が英語に関してはかなりナチュラルにしゃべることに感心したりとか、その程度だったように思います。「歌」というと、特にコーラスをやっていた僕のような人間にとっては、その「人」としての部分が如実に反映される表現方法だと感じますから、やっぱり合成された歌声にはある種の空白感というか虚無感というか違和感があった、というのがこれまでの感覚でした。

しかし初音ミクの歌うサンプルソングを聞いて、いや〜「技術の進歩」というのはあるのだな、と素直に感心してしまいました。ここは四の五の言う前に、サンプルを聞いてもらいながらの方が話が早いでしょう。幸いなことに、初音ミクの歌は、震源地とも言えるニコニコ動画のみならず、YouTube 等でもたくさん聞くことが出来ます。その中から、個人的に面白かったものをいくつかピックアップしてみました。

[『アンインストール』 をVOCALOID2初音ミクが歌ってくれた。 x722](http://jp.youtube.com/watch?v=lvM44DytTyE" target="_blank)

先日最終回を迎えたアニメ、「ぼくらの」2のテーマ曲だった石川智晶「アンインストール」を、初音ミクに歌わせているムービーです。この曲は冒頭や間奏時のヴォーカリーズが目立つ曲で、歌、とは言ってももともとちょっとシンセチックなところがありますから、初音ミクとの相性は非常によさそうです。結果として、速いパッセージでの言葉の歌い方に違和感を感じる部分を残しつつも、びっくりするくらいちゃんと「聞ける」歌になっています。特に驚いたのは、僕が「歌」を聞いていて「人間」を感じる部分を、初音ミクもちゃんと持っているように感じたところです。微妙な言葉回しとかフレーズの最後での息の置き方、母音の発音の言葉による違いなど、確かに人間の歌手に比べればすべて淡白ではあるのですが、確かに「人」の存在を感じ、ちょっと背筋がゾクッとしました。かつての、宇宙人のようなまるで実在感のない合成音声とは大違いです。この曲に関して言うと、初音ミクの声とオリジナルの石川智晶の声が少し似ている、というのもハマり具合に好印象をもたらしているような気がします。

[初音ミクに「プラチナ」を歌わせてみた。実写版。](http://jp.youtube.com/watch?v=IwWPbY8eFNQ" target="_blank)

「カードキャプターさくら」の主題歌で、坂本真綾の歌う「プラチナ」を初音ミクに歌わせているムービー。坂本さんの歌う実写ムービーに初音ミクの歌を重ねてます。上の「アンインストール」よりもたぶんより調整が行われていて、ある程度速いフレーズもほとんど違和感を感じさせない出来。ただ逆にそれが、単に「別人が歌った歌」というような印象となってしまって、むしろ本家である坂本真綾の歌の魅力を思い出させてくれるようなモノになっています (たとえば声のキャラクターとしては僕は坂本真綾の方が好き)。

ちょっと面白かったのは、初音ミクはシンセですから、フツー絶対に音を外したりしないわけです。でも歌というのはいろいろ複雑なもので、単に正確な音を出せばよい、というものでもないのですよね。声の質やメロディなどによって、微妙にピッチや響きを調整しないとなかなか魅力的な「歌」にはなりません。人の耳 (というか感覚) はとても敏感なんだな。この曲のサビは、坂本真綾版ではスコンと上に抜けたとても気持ちのよい開放感を感じさせる部分なのですが、初音ミク版では声の響きのせいか、微妙にピッチが低いような、少し暗い印象になってしまっています。とはいえ、そんな「響きの明るさ」みたいな微妙な話を合成音声相手に出来る日がこんなにすぐ来るとは夢にも思いませんでしたよ(笑。

[「大地讃頌」- 初音ミクVer.](http://jp.youtube.com/watch?v=4Vym5gt29fg" target="_blank)

みんなが知ってる超有名合唱曲、佐藤眞作曲の「大地讃頌」を初音ミクに歌わせているもの。初音ミクの声自体が現実の声優さんの声をサンプリングして作られているものですから、混声四部合唱のこの曲の全パートを一人で歌う、というのはどうしても無理があり、特に低いほうのパートの声はほとんど聞こえません。発声法もコーラスのそれとはまったく異なるため、コーラス、というよりは「オサレなボーカルグループが歌った『大地讃頌』」みたいな風情になっています。ところでこの曲の後半、いったん落ち着いてからフィナーレへ向けてクレッシェンドしていく部分は確かにフレーズを長く取るべき部分ではあるのですが、さすが初音ミク、まったくブレスしてないよ(笑。実際に何度も歌ったことのある人間にとっては、最後の山をノーブレスで歌いきる初音ミクの歌を聴いていると、想像妊娠ならぬ、想像酸欠になってきて頭がクラクラします(笑。なるほど、ちゃんと人間が歌っていることを感じさせるにはブレスのこともちゃんと考えないといけないのね。

[【ミクカバー】初音ミクでBeautiful World/宇多田ヒカルを歌ってみた x9,441](http://jp.youtube.com/watch?v=wp_r8rhIIXI" target="_blank)

宇多田ヒカルの「Beautiful World」を歌わせている例。この例で面白かったのは、宇多田ちゃんが明らかに日本語歌詞の部分と英語歌詞の部分で発音を変化させているのに対して、初音ミクはすべてカタカナ発音になっちゃっているところです。これを聴くと、今の VOCALIST2 のエンジンは極めて日本語の歌に特化されたチューニングがされているに違いないと想像できます。

さてさて。それにしてもアップされている動画が異常にアニソンに偏っているのは、初音ミクに興味を持っているのが主にそっち方面の人だからしょうがないのかな。あと、もののけ姫とかいかにもハマりそうな曲だと逆につまらないような気がするんですけどね。とかなんとかいいつつ「[ふたりのもじぴったん](http://jp.youtube.com/watch?v=Q32IX6_xAmQ" target="_blank)」はやっぱり名曲ですよねぇ!(笑。

実は

今、アメリカ出張中だったりします(笑。こちらは夜中の3時過ぎ。草木も眠る異郷の丑三つ時に、↑みたいな濃いぃエントリ書いてる僕はやはりアホですな…。
おまけ。[コレ](http://jp.youtube.com/watch?v=E2-TzN-CaK4" target="_blank)とか[コレ](http://jp.youtube.com/watch?v=IGObhuGNul8" target="_blank)もかわいい&笑える。

む、

上のエントリを書いていてずっと、「初音ミクに歌わせる」という表現に微妙に違和感を感じてたんですが、これはあれですか、初音ミクのような仮想人格 (<?) に対して無自覚に上から目線で語ってしまう自分のバイアスに対して、無意識が警告をあげてくれていた、ってことですか?<(^^;。
人格に仮想も現実もないですよねぇ。人格は人格だ。うん。

コメント

SAK (Mon, 01 Oct 2007 13:32:58)
一応はPCアプリである初音ミクに「アンインストール」を歌わせるセンスはすごいと思った。自己削除させる気なのかと。

まぁ、これもある意味「ぼくらの」っぽいか。
Digitune (Fri, 12 Oct 2007 17:03:03)
わはは。ナイス突っ込み>SAK
かぷぃのすけ (Fri, 19 Oct 2007 19:27:46)
http://jp.youtube.com/watch?v=yi7A2-nWuTA&eurl=http://www.new-akiba.com/archives/2007/10/pc6601.html

俺もこんなの↑見つけたよ。元祖歌うパソコン。
Digitune (Mon, 19 Nov 2007 22:45:23)
僕が2番目に買ったパソコンは PC-6001mkII だったんだよなー>かぴのすけ
そうか、6601 から歌ったのか。SR 世代が出た時、超うらやましかったのがスゲー懐かしい。
ねおん (Sun, 16 Dec 2007 15:27:24)
いまさらじゃが、

> 人格に仮想も現実もないですよねぇ。人格は人格だ。うん。

こうゆうことを書いておるから、ワシはお主が大好きなんじゃよw
Digitune (Mon, 24 Dec 2007 11:47:08)
どうもありがとうございます>ねおんさん

そういえば、三原順の「ムーンライティングシリーズ」、読みましたよ。実に素晴らしかったです。

  1. ちなみに僕はいまだニコ動のアカウントを持ってないんで、今回紹介する動画もすべて YouTube にアップされていたものです。 ↩︎

  2. ねおんさんの日記を読んで興味を持ち、3話目くらいからずっと見ていましたが、ナカナカ面白いアニメでした。 ↩︎