bird「数学ガール」, 「不思議のひと触れ」, 「山へ行く」, 「地平線でダンス」, 出張映画評(2)

「数学ガール」

数学ガール 結城浩著。数学好きの主人公「僕」が、同級生のミルカさん、後輩テトラちゃんと数学の世界を楽しむお話。

実に素敵な本でした。僕の第一印象を一言で表すなら、「とても美しい本だった」でしょうか。「数式をいじるのが趣味」「家族が寝静まった後に一人で数式に取り組む時が至福の時間」という主人公のことを最初は全く理解できなかったんですが、この本を読み進むうち、僕も「数式をいじる」ことの楽しさが少しだけ分かったような気がしました。登場人物たちが式と格闘するさまがちょっとした冒険小説のような趣で、新たな発見で証明が進んだ時などは本当にドキドキしました。

扱われている題材は高校生レベルなんだと思うんですが、その「数式をいじる」ステップをとても丁寧に説明してくれているので、高校生でなくても読めるんじゃないだろうか…と思うくらい、優しい印象があります。一般的に科学の本、特に教科書なんかは、簡単な事でもわざわざ難しく書いてあったりすることがあることを思うと1、このような本はとても貴重なんじゃないかと思いました。

「数学ガール」のユニークな点としては、なんといっても縦糸にそのようなストイックな数学の題材を扱いつつも、横糸として主人公達の心のふれあいを持ってきているところでしょう。頭の固い人だと、「数学の本にどうしてそんな話が必要なんだ」と怒り出したりしそうではありますが(^^;、僕はこの構成をとても自然に感じます。一人で数式と戯れることも楽しいのだろうけれども、やはり他者とコミュニケーションしつつ取り組むことで、そのモチベーションや喜びも何倍にもなると思うのです。そういう素敵な研究仲間のあり方を、この本は自然に見せてくれているように思いました。

「不思議のひと触れ」

不思議のひと触れ シオドア・スタージョン著。SF 界きっての短編の名手、と言われているらしいスタージョン。とはいえ、この本では SF 色はあまり強くなく、ホラーあり、ショートショートあり、ジュブナイルっぽい話あり、ユーモア小説あり (全10編収録) と、多彩なお話が楽しめました。

実はスタージョンを読むのはこれが初めてだったりするんですが、結構フィーリングあうかも。特に表題作の「不思議のひと触れ」や「閉所愛好症」「孤独の円盤」あたりに、特にぐっと来ました。この河出の奇想コレクションからはもう一冊短編集が発刊されているので、買ってみようかしら。

「山へ行く」

山へ行く 萩尾望都著。「ここではないどこか (ANYWHERE BUT HERE)」シリーズの一冊目だそう。全10編を含む短編集です。

これまたいろいろな趣向のお話が含まれる本でしたが、やっぱり萩尾さんの本は面白いなぁ。どの話も面白かったのですが、強いて言えば「ゆれる世界」「ビブラート」「柳の木」あたりが印象に残っています。「ゆれる世界」の、世界の崩壊を防ぐために羽を羽ばたかせられないバタフライ族、という設定には笑った。

「地平線でダンス」

地平線でダンス 1 柏木ハルコ著。あれ?「QUOJUZ2」はどうなったの?と思いつつ。この話はスピリッツで連載しているらしい。今回はエロ成分はほぼナシの模様。

やや、この本もすごく面白かったです。ジャンルで言えば SF。柏木さんが SF?!って感じかもしれないけれど、予想以上にはまっていると思うなぁ。「科学」方面にアンテナを立ててる、という意味で、上の萩尾さんの本とも微妙に共通点を感じたりして (なんて書くとファンに叱られそう。一緒に読んだからだけだろうって?ごもっとも)。「地平線でダンス」という書名と SF という部分で、ちょっとル・グィンなんかも思い出しましたよ。とかなんとかいっても、ストーリー的にはすっごくシンプルな SF どたばたラブコメディなんですが(笑。この先どうなっちゃうんだろう…?と思わせる、ジェットコースターストーリーです。

出張映画評(2)

先週、また出張に行っていたんですが、今回は「ゴーストライダー」「ラブソングができるまで」「バブルへGO!!〜タイムマシンはドラム式〜」「どろろ」の4本の映画を見ました。

今回は総じて不作っぽかったですねぇ。「ラブソングが〜」と「バブルへGO!!」はそこそこ面白かったけれど。

それよりも今回の出張で驚いたのは、行きも帰りもオーバーブッキングのためにビジネスクラスへ格上げしてもらったこと。生まれて初めてのビジネスクラスだったんですが、ありゃー快適ですねぇ。びっくり!


  1. 欧米ではいわゆる「ポピュラーサイエンス」というジャンルが確立しているので一般向けに優しく、しかも本質を見失わずに説明してくれている良書がそれなりにあるのですが、日本では結構レアな気がしますよね。 ↩︎

  2. 「コジューツ」と読む。ちょっとグロテスクでエッチな漫画。 ↩︎