birdSCE 久夛良木グループ CEO、退任

SCE 久夛良木グループ CEO、退任

すでに旧聞、という感じですが、先月終わりに、これまでずっと SCE、ひいては PlayStation プラットフォームの顔でもあった久夛良木グループ CEO が6月の任期満了をもって退任され、名誉会長となることが発表されました。
世間的には、PlayStation といえば久夛良木さん、ちょっと前にはその成功を持って Sony 本社に凱旋し、副社長まで上り詰めた豪腕経営者、というイメージが強いのでしょうが、僕の中の久夛良木さんの最良のイメージは、実は PS1 発売前の、まだ PSX とそれが呼ばれていたことを語っていた久夛良木さんかもしれません。実は前の前の会社にいるときに、偶然にもかつて久夛良木さんの下で働いた事がある、と言う人と一緒に仕事をする機会に恵まれ、彼からそのアクの強いキャラクターについてはいやというほど聞かされていたので、社長、という会社の顔としての久夛良木さんにはそもそも少し不安があったせいだから、かもしれませんが。
正直、彼が社長という会社の顔になり、ヴィジョナリーとしての責務をその一身に背負いだしてからの SCE の打ち出してきたヴィジョンには、僕としては素直に納得できるものはほとんどありませんでした1。PlayStation BB しかり、e-Distribution しかり2、CELL 構想しかり3。ちなみに PS2 というマシンのアーキテクチャについては僕は世間で言われているほど批判的ではありません。トレンドを外してしまったことは確かだけれど、ああいうトンがったマシンも面白かったと思う。しかも、曲がりなりにも今まで生き残っている、ということは、それなりに懐も深かった、ってことの証左だと思いますし。
久夛良木さんの話に戻すと、つまり僕は、彼は会社の顔として「一人ヴィジョナリー」となるよりも、優秀なトップの元で暴れまくっていた方が良かったのではないかと思っているわけです。
とはいえ、SCE という会社にとっては、久夛良木さんがトップだったこれまでの期間は、間違いなく会社の黄金期だったのでしょう。これからはまさに正念場、これまでの成功体験をある意味覆して4、コンピュータエンタテインメントの世界を更に広げていくためにはどうすればよいのか5、地に足をつけて知恵を絞っていかなければならないだろうと思いました。

コメント

ねおん (Thu, 03 May 2007 03:48:54)
しっかり書いてくれたのお、感心じゃ。

まあ会社というものを、自分がある状況・世界を作るための手段、と考えている人間にとっては、昨今のある種の乖離状況は、耐えられんかったのかも知れんのお。

そういう人間には、誰かの下で暴れる、とゆうのは、まあ難しいじゃろうなあ。

ワシはMr. Kを勝手にシンパシーを感じておる部分があったりして、コメントにも色々含みが…ごほごほ
MNK (Fri, 04 May 2007 06:57:47)
さーて、という感じですが。少しいろいろなリアクションを観察していようと思っています。

段取り、という意味では、やっこさんもそんな違いはないんですけどね(笑)。
3ヶ月前って、オイ。

http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20070311/brain.htm

ただ、ビジョンという意味では違います。これはトップの話では実はないのですが。もっとも、彼らのビジョンはトレンドとかじゃなくって、むかーしからの信念なんだけどね。これは実は*5のコメントの部分そのもの。岩田さんと初めてあったとき(1996年?)に、いきなり*5を言われたのをよく覚えています。

技術的には彼らも賢い&偉いよー。でも、僕は実際10年前の彼らを知ってるのですが、実力的にはそんな遜色はないっす。みんな、仕事の内容が変わってないなあ(懐)。

と思い出を反芻&評論家していてもつまらないので(笑)、行動していきたいと思います。
SAK (Sun, 06 May 2007 23:40:38)
クタタンのこれからの構想の記事見ると、『ネットワーク上に新世界を築くこと』とか言っているのが、かな〜りドキドキ。
実際、ナニを考えているんだろうなぁ。ナニも考えてないなら良いんだけど。
Digitune (Mon, 07 May 2007 22:12:31)
コメントどうもありがとうございます>MNK さん
ねおんさんと MNK さんのコメントが並んでいると個人的にはちとドキドキしてしまう…(笑。

クタタン、そんなこと言ってるのか>SAK
でもその辺はクタタン子飼いの手下共が何とかするんじゃないでしょーか?
かぷぃのすけ (Mon, 07 May 2007 23:00:46)
トップのビジョンは株価を上げるためだとすると、ビジョンがゴリゴリ出る人間はトップに向いてると言える。ってさ。

  1. これは、それまで SCE が打ち出してきたヴィジョンと僕なりに比較して、という意味です。過去へのしがらみを一切持たない完全に 3D グラフィックスを指向したハードウェア (そういう意味では、同時期にデビューしたセガサターンはまだずいぶんスプライトな世界をその設計に色濃く残していましたね) や、CD-ROM による出版業に近い形の、音楽業界と似た流通システム (当時、スーパーファミコン用ファイナルファンタジーの新作は一本 11,400 円もの定価で売られていて、売り切れてしまうと数ヶ月は追加補充が来ないなど、ロムベースの任天堂の流通は限界に来ていました) など、初期の頃に SCE が打ち出したヴィジョンには、社名の通りコンピュータエンタテインメントの世界を大きく広げてくれそうな夢にあふれていました。 ↩︎

  2. これは一番マシなほうでしたけれど。 ↩︎

  3. DVD レコーダの方の PSX は、一般には「失敗」と捉えられているようですけれど、僕はそうは思いません。そらゲーム機に比べれば発売された台数は桁違いに少なかったけれど (ソニーがアレをゲーム機なみに作るつもりだったのだとすれば、その見込みこそが失敗だったのかと)、今思えば、PSX が出た事で DVD レコーダは一気に市民権を得 (価格も急激に下がりましたね)、そしてその後急速に萎んでしまいました。PSX のプロジェクトで「失敗」と呼ぶべきは、ソフトウェア開発管理の杜撰さですね。そしてその問題はその後のプロジェクトでもまだ完全には解消されていないように見えます…。 ↩︎

  4. このあたりは日経新さんコラムの影響か(笑。 ↩︎

  5. 相変わらず、ゲームはエンタテインメントとして映画や音楽同様の市民権を得たとはとてもいえない状況だと感じています。任天堂の岩田さんがよく言っているように、ゲームをしている姿をかっこ悪いと思わせるようではダメなんですよね。本を読め、音楽を聴け、映画を見ろ、と同列に、ゲームをしろ、と皆に言われるようにならないと。 ↩︎