birdSM シリーズ一気読み

SM シリーズ一気読み

なんだかんだ文句を言いつつ読んでいる森博嗣著のこのミステリーシリーズ。いい加減疲れてきたので残り4冊まとめて借りて2週間で一気読みしました。

夏のレプリカ―REPLACEABLE SUMMER

「夏のレプリカ―REPLACEABLE SUMMER」
7作目。一つ前の「幻惑の死と使途」とペアになる作品で、ほぼ同時に起きた事件、という設定になっています。ただ、あんまりそれぞれの事件を絡ませることによる面白みもないし、なんとなーくこちらの話の内容が薄いので何とか内容を膨らませるために絡ませてみた、という感が無きにしも非ず。トリックもストーリーもそのくらい小粒な印象のお話。そういや、この話はタイトルの意味が分からないなぁ。肝心なところを読み取れていないのかしら?

今はもうない―SWITCH BACK

「今はもうない―SWITCH BACK」
8作目。ここまで来て、このシリーズ中一番好きな話に出会えたかも。何しろ「エロ中年」笹木がサイコー(笑。「ミステリー」としてはその定義上ほとんどギリギリな感じだけど、お話としてはこれが一番面白かった。

数奇にして模型―NUMERICAL MODELS

「数奇にして模型―NUMERICAL MODELS」
9作目。タイトルは何かの暗喩なのかと思ったら、まったくそのままの意味でズッコけた。模型マニアがたくさん出てくる話。マニアの描写がやけにリアルだなぁ、と思いつつ読んでたんですが、あとがきを見てビックリ。森氏ってかつては同人漫画家だったのね。なるほど、それでちょっと漫画ちっくなのか…とステレオタイプに簡単に納得してしまう俺(笑。前2作が小品的味わいの作品だったのに対し、この話はフルスケールというかフルスペックというか、ちゃんとおなかいっぱいになる話。

有限と微小のパン―THE PERFECT OUTSIDER

「有限と微小のパン―THE PERFECT OUTSIDER」
さて、SM シリーズ最終作である10作目。一作目「すべてが F になる」のサブタイトル「THE PERFECT INSIDER」に対して明らかに対応させていることからも分かるように、この話にも「例のあの人」が登場します1。んがしかし、どうなんすかね、これ。とにかく異常に厚くて超思わせぶりで長々引っ張った結果のオチがアレ、というのは、思わず本を投げたくなる人もいたりするんじゃなかろーか。ところで全然本筋と関係ないけど、VR 装置の記述がいかにも理系っぽく「今の技術で」実現できそうなレベルに書かれているのが、可笑しくもあり、つまらなくもあり。VR 装置を扱ったミステリーとしては僕は「クラインの壷」の方が好きだなぁ。後者は確かに非現実的ではあれど、より純粋にミステリーとして (?) 楽しめると思う。この話の VR 装置はちっともすごく見えないので、肝心のクライマックスシーンも作者は幻想的な効果を目指したのかもしれんが僕にはなんだかちょっと滑稽な感じがしたよ。それにしても「天才」の描写は難しいですね。最後の最後のオチで俺は一気に「天才性」が薄れてるように感じたんですが、そんな事ない?

  1. ヴォルデモート卿じゃないよ(笑。 ↩︎