「Big Bang The Origin of the Universe」, テレビ不調(2), 月刊 ASCII 休刊&リニューアル
「Big Bang The Origin of the Universe」
Simon Singh 著。ようやっと読み終わりましたぁ。サイモン・シンのこれまでの本同様、いわゆる宇宙論に関してギリシャの昔から現代 (のちょっと前くらい?) までとても丁寧に、そしてドラマチックに追った本です。僕がとても面白かったのは、その時代時代でメインストリームを争っていた理論が、当時どうして支持を得ていたのかをきちんと説明しているところです。例えば天動説・地動説というような話などは、日常的に人工衛星を飛ばし、太陽系から飛び出すような探査機をすでに持つ現代人にとっては、どうしてそんな事を信じていたのだろう?と逆に思えてしまうわけですけれども、当時は重力という概念がまだなく、その代わりに「すべてのものは宇宙の中心に引き寄せられている」と信じられていたのだそうで1、そうすると地動説的な世界観は確かに受け入れがたい (「じゃあどうして地球上のものは宇宙の中心へ落ちていかないのだ?」という疑問に答えられない)。また、普通の人には地球が動いている事が全く感じられない (今考えるとスケールが違いすぎるので当たり前、という話なのでしょうが)、というのも、結構強い反証だったとか。
また、僕らは物心ついた時にはすでに CMB Radiation (Cosmic Microwave Background Radiation、つまり宇宙マイクロ波背景放射のこと) も見つかっていたし、宇宙論の主流は Big Bang モデル、という状況だったので全く知らなかったんですけれども、前世紀中ごろ過ぎまで、Big Bang モデルは Steady State モデルと呼ばれるものとがっぷり四つで争っていたんだそうですね。Steady State モデルはいわゆる定常宇宙論の一種で、ハッブルの発見した赤方偏移2を、Big Bang とは異なる方法で説明可能な宇宙論です3。そのモデルについて僕は全く知らなかったので実に面白かった。Steady State モデルの提唱者、フレッド・ホイルの名前だけは何か別のところで聞いた事があったんですけどね。ホイルは重たい元素が超新星爆発によって生み出される、という話を考えた人でもあるらしいので、たぶんその辺かなぁ。
僕は最近、この本のエピローグでも触れられているような、「じゃあとりあえず Big Bang はあったとして、今この宇宙を構成している6つの基本的なパラメータ (重力定数、強い力の性質、その他…よー知らん・笑) はどうして今の値になっているのか?」というような議論の方をよく読んでいたせいか、素の Big Bang ってすでにちょっと old-fashioned な理論なのかと思ってたんですが、基本的な枠組み、という意味では今もまさにメインストリームに座り続けている理論なのですね。この本はその点、すでにある程度評価が固まっている部分に関して歴史的な流れをとても密度濃く追ってくれていてとてもためになりました。代わりに、インフレーションや VSL、上記の「宇宙の自然淘汰」に関する話題などはエピローグでさらりと触れられているだけなので、最新トピックに興味がある人には少し物足りないかも。
それにしてもですねー、彼の翻訳本でも感じていましたが、彼の本のリーダビリティ (あえてカタカナ) はものすごいです。英語の本なんて全く読んだ事のない、自他共に認める英語の苦手な僕でも何とか最後まで読み通せてしまうのですから。難しい単語を使っていないわけでもないんですが、本の構成 (図表もとてもたくさん使われているし、各章の最後には必ず手書きのサマリーノートがあって、その章の流れを概観できるようになっている) や文章がとてもよく考えられていて、多少単語が分からなくても内容が無理なく理解できてしまいます。この間読んだ本の 16 歳のセアラさんがお薦めしているのも納得ですよ。このリーダビリティなら若い人にも無理なく薦められます。
彼の既刊2冊もこの機会に英語で読み直してみようか、と思った今日この頃なのでした。
テレビ不調(2)
以前に書いたとおりイマイチ調子悪い我が家のテレビですが、困った時の Google 先生頼み、で Google 先生に聞いてみたところ、スタンバイ LED が点滅する、という症状は電源の保護回路が働いてしまっている可能性があり、とりあえずコンセントを抜いて数十分放置してみると状況が改善される可能性がある、との情報を発見、早速試してみたら見事に治りました。
これでまたしばらく使えるゾ。
月刊 ASCII 休刊&リニューアル
これは触れないわけにはいられない。月刊 ASCII が今の PC 雑誌としては今月8月号で休刊、改めて 10 月に IT ビジネス総合紙 (?) として新創刊される、とのこと。月刊 ASCII 編集部 (通称 A 編) といえば、僕がアルバイトという立場ながらフルタイムの社会人生活を始めた場所。思えば、あそこから紆余曲折な社会人人生が始まったのです。
しかし、当時編集長だった遠藤さんや工藤さん、西村さんやもちろん綾丸さんなど (うー他にもいっぱいいたのに名前が出てこない)、すごく魅力的な人が多い職場だったように思う。夜中にみんなで頼むケータリングの食事、徹夜明けに通う目の前の吉野家、会議と称されたアジャンタでの食事、…なんだか食べ物の記憶ばっかりだな(笑。初台のとてもきれいなビルなのに、中で働いている人は徹夜でヘロヘロ、オフィスも超乱雑 (その後やっぱり仕事でしばらく通っていたことのあるソニーマガジンズのオフィスなどを見ても、出版社というのは概してそういうもの、っぽい。ソニマガの時は僕も受付横のソファーで朝まで寝てたりしたことがあります・笑。社長が笑いながら横を通っていったとか何とか後で聞かされたりして) そのギャップが当時なんだか可笑しかったっけ。
今回のことが雑誌、というメディアの呪縛から逃れられなかった結果なのかなんなのかは分からないけれど、あの場にいたあの方々は今、またはこれからどうされていくのでしょう。なんだか少し切なくなってしまうニュースなのでした。
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その理由がまたよく分からないんですが、その辺はまだいわゆる Myth (神話) の領域だったのでしょうね。 ↩︎
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遠くの星ほどそのスペクトルが赤へずれている、という事実。一般にそれはドップラー効果により引き起こされていると考えられていて、つまり遠くの星ほど早く地球から遠ざかっている=宇宙は膨張している?と捉えられ、初期の Big Bang の大きな駆動力となった。 ↩︎
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川の水は常に流れているのに川自身は変わらないように、宇宙も個々の銀河は離れていくがその隙間から次々新しい銀河が生まれ、宇宙全体としては常に同じ状態を保っている、というような感じ。個々の銀河がいくら膨張していっても、そもそも宇宙は無限の広さを持つと考えられていたため、無限には何をかけても無限なので、全体としての状態は変化しないと考えられた。 ↩︎