bird35mm 換算焦点距離

35mm 換算焦点距離

最近のデジタルカメラは、ほぼ例外なく 35mm フィルムよりも小さな撮像素子 (CCD や CMOS) を利用しているため、そのレンズの焦点距離もとても短くなっています。そのため、昔からカメラを使ってきた人に感覚的にわかりやすいように、35mm フィルムのカメラに換算した時の焦点距離を書く、ということがしばしば行われています。例えば、Sony の Cyber-shot T30 は 1/2.5 型の CCD を搭載しています。1/2.5 型は対角 7mm くらいの CCD のようで、35mm フィルム (対角 42mm くらい?) と比べると、寸法比で 1/6 くらいです。T30 が積んでいるレンズは実際の焦点距離は f=6.33〜19.0mm というものですが、これだと直感的にどのくらいの画角かわからないため、35mm カメラに換算した「35mmフィルム換算:38〜114mm」という数字もカタログに記載されています (後者が前者の6倍となっていることがわかると思います)。また、僕が持っているキスデジの CMOS はほぼ APS-C サイズと同じといわれており、35mm フィルムとの換算比は一般に 1.6 倍といわれています。
ところで先日ふと、何気なく使っているこの「35mm フィルム換算焦点距離」が、実は2種類あるのではないか、ということに気が付きました。上記の Cyber-shot T30 のような一般的なコンシューマカメラの場合、CCD がフィルムよりも小さいことにあわせて、レンズも小さく、専用に設計されています。つまりバックフォーカルディスタンスも、小さい CCD (フィルム)、小さいレンズに合わせて短く設計できているわけです。この場合、原理的には 35mm フィルムのカメラと相似に (つまり完全なミニチュアとして) 作る事も出来るであろうことから、画角、という意味では、まさに 35mm 換算が成り立ちそうです (ボケの問題はとりあえず置いておきます)。
しかし、現在のキヤノンやニコンのデジタル一眼レフの場合、35mm フィルム時代と同じレンズシステムを使うために、小さい撮像素子にもかかわらず、35mm 時代と同じフランジバックを持たせる必要がありました。そうすると、出てくる画像はあくまでも「35mm フィルムをトリミングしたもの」になります。だとすると、確かにフレームの見た目のサイズは上で書いたような 1.6 倍といった換算が有効でしょうが、その中身のパースペクティブのかかり方については、35mm カメラと全く変わらない、ということになります。例を挙げれば、35mm 時代の標準レンズ 50mm に対して、デジタル一眼レフでは 1.6 倍を考慮して 30mm くらいが標準レンズ相当、と言われていますが、35mm カメラ+50mm レンズとキスデジ+30mm レンズで同じ場所で同じ被写体を狙った場合、確かに対象そのものはほぼ同じ大きさで写せる可能性はあれど、その背景はきっとキスデジの方が小さく写ることでしょう。1.6 倍換算のキスデジの場合でも、パースペクティブのかかり方は 35mm カメラに 30mm レンズをつけた場合と同じだからです。
というわけで、カメラとレンズが一体となったコンシューマカメラ、またデジタル専用に再設計されたフォーサーズ (多少フランジバックが短いらしい) ではより本当の意味で換算が有効、その他の 35mm 時代と資産を共有するシステムでは換算はあくまでフレームに入れられるサイズが同じ、くらいに思っておくのがいいんじゃないかと思ったんですが、そんなことないのかなぁ?
5/8 追記。よく考えると (よく考えなくても?) そんなことないですね(^^;。最初から焦点距離ではなく画角で考えれば良かったんですが、例えばシグマのカタログには、50mm F2.8 EX DG MACRO の画角について、35mm フォーマットの場合 46.8°、SD フォーマット (1.7 倍換算) の場合 27.9°と書いてあります。対して 28mm F1.8 EX DG ASPHERICAL MACRO の場合、同じく 75.4°、47.9°となります。つまり画角で見ると、35mm の一眼レフに 50mm レンズをつけた場合と、SD フォーマット (≒APS-C サイズの CCD を持つデジタルカメラ) の一眼レフに 28mm レンズをつけた場合がほぼ等しくなるわけです。画角が等しい、ってことはたぶん、パースペクティブのかかり方やらなんやらも同じになりそうで、つまりいわゆるデジタル一眼でも換算焦点距離を普通に使ってよい、というのが正解なのでしょう。
撮像素子が小さくなっているのに同じだけバックフォーカルディスタンスを確保しなくちゃいけないのは特に広角レンズの設計では大変そうだけど、最近ではレトロフォーカスレンズの設計もずいぶん進んできているし (Olympus の 7〜14mm、なんていうお化けレンズもあったりします)、デジタル専用とすればイメージサークルも小さく出来る=レンズ全体を小型化できる、というわけで、クリアできない課題ではない、ってことなんでしょうね。