bird「ワンダと巨像」グラフィックス講座

「ワンダと巨像」グラフィックス講座

うむー。これだけいろんな技術や職人芸が詰め込まれて初めて、あの豊かな世界が実現されるのですね。記事の最後でディレクターの上田さん1が、

そうした次世代機のゲームテーマとしてなりえそうなことを、現行機で先取りして実現することに意味があるのではないか……この作品をPS2で完成させたのは、そう考えたことにも理由があるんです

なんて書かれていたのが、ちょっと意外でもあり2、とても頼もしくもあって面白かった。次回作も期待しています>ICO チームの皆さま。

コメント

うさ (Thu, 08 Dec 2005 22:04:24)
読んだけれど、こういうすげーアルゴリズムって柔軟性に
富んだ若い頭脳からしか出てこなくない?
つーことは古くなっちゃってあんまり柔軟でなくなった
ゲームプログラマってどうなるんかね?
やっぱクビ?
プログラマ30歳説ってゲーム業界に関しては大有りな
気がする。そんなオレ様はもう1年近くもプログラム書いて
いないわけですが。
かぴのすけ、 (Fri, 09 Dec 2005 21:28:22)
ここに書いてあるアルゴリズムって割と枯れてるっつーか、太古からあるですよ。ゲーム業界発の技術でもないだろーし。プレツーに効率的に落とし込んで調整を頑張ったってのが彼らの功績でしょう。

レベルの高いソフトを見ていつも感じるのは「いったいどんな面子で作ってんだ?」てこと。キーパーソンは絶対にいるんだとして、その他の中のヘボいやつによるヘボい仕事が作りのどっかに現れてきてもよさそーなもんだ。カメラワークの悪さとか。どこにもヘボさのないソフトはどーやって人集めて創ってんのかと。

ソフトウェア技術の世界は、(A)人智じゃ到底手の届かないレベル、(B)難しいけどできないことはないレベル、(C)ふつーに高度なレベル、(D)その他、に大別できる。技術自体は時間と共に(A)から(D)にシフトしていく。で、研究は(A)か(B)を取り扱うけど(A)は時間と金ばかり掛かって全然本質的なところに踏み込めないでいる。が、(B)は着目されると割とあっちう間に埋め尽くされる感じがある。進み過ぎなぐらい進む。ところが(C)は(B)より簡単なのにあんまり進まないんだよね。そこに壁がある。

(B)までは純粋なソフトウェア技術だけど(C)以下は現実に落とし込んだ応用なので、現実世界のさまざまなアノマリーにも対応しなければならない。あとビジネスや実際の製品にも落とさないといけない。これをまづ誰がやんのかと。(B)も(C)もわかる人間でないとダメなわけで。これが意外といないんですな。

だから既にあるんだけど使われてない有益っぽい技術がたくさんあって、もったいねえなーとか思うわけよ。
Digitune (Sun, 18 Dec 2005 22:30:44)
プログラマ30歳定年説、って確かに以前から言われてるけど、僕はあんまり信じてないっす>うさどん
確かに若い頃のようなコーディングパゥワーに任せたコードは書けなくなって行くけれども、その分上手に手を抜く方法を覚えていくものだと思うし、それにプログラミングと一口に言ってもいろいろな側面があって、必ずしも「若さ」の必要とされない部分もたくさんあると思うんだよね。「若さ」よりも solid で枯れたコードが必要な部分、ってのは案外多いと思うよ。

技術レベル、ってのは直線状ではないからね>かぴのすけ
かぴのすけも「(B)も(C)も分かる人間でないとダメ」と書いているから理解しているんだと思うけど、ソフトウェアを上手に作るには、個々のパーツそれぞれが優れていることはもちろん、それらをバランスよく組みあわせる必要がある。その辺のスキルってのは個々のパーツだけを見ている人にはなかなか難しくて、また別の才能がいるんだよね。一人の人間がそれを全部やろうとしても土台無理な話で、パーツのタレント、インテグレーションのタレントなどが力をあわせて作っていかなくちゃいけない。
前の会社にいたときにも、時々要素技術的なソフトウェアの売り込みを受けたことがあった。しかし、そのほとんどは実際のビジネスには結びつかなかった。なぜか。それは、サービスを組み立てている人間から見ると、どんなに優れたソフトウェア技術でも、それ単体ではたいていの場合サービスにつながらないのですよ。技術はサービスの要素に過ぎない。Google の PageRank にしたって、アレだけじゃ Google は作れない。その他の GFS だの分散されたホストの管理ツールだのこまごました雑多な技術が組み合わさって初めて「Google」という一つのサービスが提供できる。要素技術を売り込みに来る人達は、その辺が微妙に分かっていない人が多かったなぁ。「今の御社のサービスにこの技術を組み込めば顧客満足度上昇間違いなしです」と言われても、単純に費用対効果的にほとんどの場合ペイしないのだった。残念。
かぴのすけ、 (Mon, 19 Dec 2005 21:16:10)
> 羽の生えたカマドウマなんて見たことないぞ

そりゃ、そんなのいないからさ。

> 技術レベル、ってのは直線状ではないからね

技術レベルは直線状ですぞ。レベルだから。
まあ、俺が述べたのはレベル分けじゃなくて世界分けだけどね。
「そのぐらいのレベルを扱う世界」ってことで分けている。

> 一人の人間がそれを全部やろうとしても土台無理な話で

能力的にそれが無理とかいうことはなくて、一人でなんでもわかってしまう人はいるよ。そしてそういう人はたいがい実装能力もおそろしく長けている。ただロールが細分化されてて人の領域にまで手を出しづらいだけ。

> 単純に費用対効果的にほとんどの場合ペイしないのだった

それだと単に、高いから買わない安けりゃ買うとかそういう世界の話だな。

しかしまー上ではあえて触れなかったんだが、実際にはペイがどーのこーのってのはロストテクノロジーの原因の最たるものだろうとは思う。あと原因として大きいのは特許でしょーな。使う気もないのに出願だけしてるってのが多すぎ。
Digitune (Mon, 19 Dec 2005 22:52:04)
どんなにすごい技術でも、状況の許す現実的なコストで利用できなければあんまり意味がないわけで>かぴのすけ
それは「高いから買わない安けりゃ買う」という話とは微妙に違うと思うんだが…。ちょっと抽象的になっちゃうけど、技術って言うのは本来それが活用されるべき領域、というのがあって、それがマッチしていればどんなにコストがかかる技術でも利用されるし、マッチしてなきゃどんなに安くても利用されないものでしょう。スーパーボールみたいに、思わぬ方向で活用されるようなラッキーもあるけど、大抵は適合する状況を見つけられなければ単に埋もれていくのだろう。ソフトウェアに限らず、そういうのって結構一般的なことなのではないかい?
かぴのすけ、 (Tue, 20 Dec 2005 22:00:43)
ツッコミレベル高めにしてたからもっとムキになって反論してくるかと思ったけど意外とおとなしめでしたな。

「費用対効果的にほとんどの場合ペイしないのだった」は、組み込みに掛かる手間も含めるとペイしない、てことでOK? でないと高い安いの問題になる気。

> そういうのって結構一般的なことなのではないかい?

適合領域が見つからないもんは「有益っぽい技術」に入らないから本論からは外れるのだよ。

コスト問題も権利問題もなく、有益であるにも関わらず、ほとんど使われてない技術ってのがあるってこと。そんな技術10年前からありますよってのになぜか使われてない。まぁ、学会で発表して終わりってぐらいじゃ世の中に広まらんわなぁ。
Digitune (Sun, 25 Dec 2005 23:55:52)
海外だとそういう埋もれた技術を掘り起こして売り込む人が結構いるみたいなんだけど、国内ではあんまり聞かないよね>かぴのすけ
大分昔に一緒に仕事した MP テクノロジなんかはそういう感じの会社だったけど、残念ながらあんまり打率は高くなかったね(;´Д`)。

  1. そういえば上田さん自らが初期アイディアを実際に検証してみて、それを担当者に提案、実装していく、という話はとても感心してしまいました。「ICO」にしろ「ワンダ」にしろ、技術や美術にとても一貫性を感じるのは、上田さんのそういう製作スタイルによるところが大きいのかもしれませんね。 ↩︎

  2. いや、そんな先のことまで考えていたんだ…と(笑。 ↩︎