「ディアスポラ」
「ディアスポラ」
グレッグ・イーガン著。なんだかんだ文句を言いつつけっこう読んでるイーガン1ですが、僕の中ではこの話が今まで最高に面白かった。あ、タイトルの「ディアスポラ」とは、「離散」という意味なのだそうです。
時は30世紀。その時代で「人間」というと大きく3つの種族に分類されています。まず普通の (有機物の) 肉体を持つ「肉体人2」と、機会の身体を持つ「機械化人 (グレイズナー)」、それからそもそも肉体を持つことを止めてしまった「ポリス人」です。「ポリス人」は同じくイーガンの「順列都市」に出てくるような、純粋なソフトウェア的人格のことで、主人公のヤチマもそんなポリス人の孤児の一人です。
これまでのイーガンの話というと、「万物理論」の前半部のようなめちゃくちゃ凝った異世界の設定や考察についての描写 (イーガンは解説者に「詐欺師」と言わしめるほど科学的にそれらしく書くのがうまい) と、ミステリー小説っぽいどんでん返しのあるプロットの組み合わせ、という印象を持っていましたが、この話はその「描写」の方を延々最後まで続けつつ、いかにもドラマ仕立てのプロットではなくて、異世界に起こるさまざまなイベントをある意味淡々と書き連ねていく、というスタイルで、そういう点が僕にとってはイーガンのお話としては珍しく思いました。この本を読んだ時、昔ねおんさんに薦められて読んだ、ガルシア・マルケスの「百年の孤独」を思い出したりしました。
とりあえず、理系的概念にアレルギーのない人、ポピュラーサイエンス好きな人は読んで損はないのではないかと思います3。とても面白かった。お薦め。