bird「航路」, 「詩的私的ジャック」

「航路」

航路(上) 航路(下) コニー・ウィリス著。読み終わったのは先々週なんですが、いろいろ忙しくて感想を書く暇がありませんでした。NDE (臨死体験) を研究する認知心理学者のジョアンナと、新しいアプローチで「NDE とは何か?」という謎を解こうとするリチャードの物語です。こう書くと全然 SF っぽくないお話のようにも見えますが、実は結構 SF かも。原題の「Passage」を「航路」と訳してしまった時点で結構大きなネタばれをしちゃってるようにも思いますが、その謎はそれほど物語上比重が大きくないから良いのか。

それにしても、読んでいる最中に僕が感じていたことが、ほとんど全て訳者あとがきに書かれていて、面白いやら、ヘコむやら。このお話は非常に長い話なんですが、プロットとしてはそれほど複雑なものではなくて、長さの大半は細々としたエピソードに費やされているところが宮部みゆきさんっぽいなぁ1、とか、NDE に関する話、というと瀬名秀明さんの「BRAIN VALLEY」を思い出すなぁ2、とか。「ドゥームズデイ・ブック」よりは重くないけど、結構ずっしりくるお話でした。面白かった。

「詩的私的ジャック」

詩的私的ジャック 森博嗣さんの S&M シリーズ4冊目 (かな?)。前回読んだ「V シリーズ」と比べると良くも悪くも普通の小説っぽくて3、やっぱり僕はこっちの方が読みやすい。

この本で一番面白かったのは実はあとがきかも。萌絵ちゃんのファッションセンスがひどい、と書かれていたりして、我が意を得たり、と(笑。他にも、犀川先生には一般に探偵には必須であるところの「好奇心」が欠如しているところが非常にユニークで、その部分を萌絵ちゃんという存在が補っているところがとてもよく出来ている、というお話は、なるほど、という感じでした。

もう一つ、森ミステリーの最大の特徴らしく、僕も微妙に違和感を感じる「動機の希薄さ」についても、ちょろっと言及されてました。今回のこの話も、こと「動機」の部分については僕は結構違和感ありましたね。そういわれればそうかもしれないけど、あんまり共感出来ないなぁ、という感じ。


  1. 訳者の大森さんは「模倣犯」との類似を指摘されていました。 ↩︎

  2. お話の流れも少し似てるんですけど、僕は「BRAIN〜」よりこの話の方がずっと好きです。「BRAIN〜」は SF 的に話を広げてった末に収拾がつかなくなってドタバタ終わる、という感じがしたけど、こちらの話はもう少し綺麗にまとまっているように思うから…。 ↩︎

  3. V シリーズは言ってみればラノベっぽい。 ↩︎