「ドーキンス vs グールド」
「ドーキンス vs グールド」
「利己的な遺伝子」で有名な生物行動学者のリチャード・ドーキンス博士と、「ワンダフル・ライフ」の古生物学者スティーブン・ジェイ・グールド博士の、生物の進化を巡る論戦についての秀逸な要約です。キム・ステルレルニーさんの本。
この本を手に取ってみた、とはいえ、実は僕は「利己的な〜」も「ワンダフル〜」も読んだことがなかったのでした(汗。なかなか挑戦的な書名が付けられていますが、内容はとても冷静、公平で、両氏それぞれの論点、対立点がよく分かる本だと思います1。逆に「対立」に関連するドラマティックな逸話のたぐいを期待されていると、ちょっと頭が痛くなってしまうかもしれない。
この本を読んで僕が2人に対して感じたのは、ドーキンスはとても理論家らしく、すでに判明している証拠などを元に最も可能性の高そうなシナリオを理知的に組み立てとても説得力のある議論をしていること、またグールドは化石の語る真実をとても真摯に受け止めようとしている、ということです。何となく、アインシュタイン物理学が登場する前、ニュートン物理学を使って現実をうまく説明している人と、それと食い違う観測結果を見つけてしまって苦悩する人のようなイメージを抱きました。ただ物理学と違って、進化に関する話は検証が非常に難しいらしくて、今のところどちらの説が正しいのか確かめるすべがない、というのはとてももったいない話です。
しかしあとがきにも書いてあった通り、この本を読むとお二方の諸作が非常に読みたくなる…。いまさらだけど今度読んでみよう。
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二人の議論の中身についてはあえてここではふれません。また僕のような生半可な知識のものが適当な認識を振りまくといらぬ誤解のタネになっちゃいますからね。 ↩︎